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リーダーを本気で育てる病院が増加している/組織開発のアプローチ

  • 業種 病院・診療所・歯科
  • 種別 レポート

全国各地の病院を訪問する中で、人材育成に対するニーズが年々高まっていることを強く感じています。特に、リーダー人材を組織的に育てていこうとする動きが活発化しており、多くの病院で経営課題の最優先事項として位置付けられています。

今後、医療政策の変動や人材採用の難化が一層深刻になると予想される中、今いる人材を適切に育成し、チームのパフォーマンスを最大限に引き出すリーダーの存在がますます重要になります。つまり、リーダー人材の質と量が、持続可能な病院経営を維持するための鍵となるでしょう。

そこで今回は、近年トレンドとなっているリーダー人材育成の取り組みについて、私たちミライバが支援させていただいている病院の事例をもとに、そのポイントをご紹介します。

リーダー人材を育てる病院の取り組みとは?

1.トップの関わり

ここ数年、病院経営者がリーダー育成に直接関わるケースが増えています。
10年前には、リーダー育成と言えば外部研修への参加や、研修委員会に任せた院内研修が一般的でした。しかし、現在では理事長や院長などの経営トップ自らが、研修の企画から実施まで積極的に関与する姿が多く見られます。

具体的な関わり方としては:
 研修企画段階から参画し、自院の現状や目指すべき方向性に合致した内容になるよう
  慎重に確認して調整する。
 研修会を定期的に聴講し、参加者の反応や研修内容を直接チェックする。
 研修初回の冒頭挨拶に登壇し、経営者としての思いや期待を直接参加者に伝える。
 研修参加者のレポート読んで、どこに響いているのか、どの程度気持ちや考えに変化が
   生まれつつあるのかを確認する。
などです。

このような経営者の本気度が伝わる関与は、研修の企画者や参加者にも大きな影響を与えます。実際、研修後のレポートには以下のような声が寄せられています。
初めてトップの想いを直接聞くことができて感動した。」、「自分たちに寄せられる大きな期待を感じ、責任感が高まった。」、「この研修をきっかけに組織が変わっていく予感がする。

経営者自らがリーダー育成に深く関与することで、組織全体の意識改革と研修効果の向上につながっています。

2.期間にまたがる複数回の研修会

リーダー育成研修を年間を通じた複数回のプログラムとして実施する病院が増えています。
従来の1~2回の単発研修では、参加者の意識や行動に持続的な変化をもたらすことは難しいとされています。リーダーシップの発達は一朝一夕で成し得るものではなく、時間をかけて繰り返し学び、自己を見つめ直すプロセスが必要です。

このプロセスは、昆虫が脱皮を繰り返して成長する様子に例えられます。慣れ親しんだ自分自身の殻を破り、新たな自分へと生まれ変わるためには、自己反省と成長への意欲を培う時間が不可欠です。

年間を通じた研修プログラムでは:
 定期的な学習機会を設け、継続的に知識とスキルを深化。
 各回ごとにテーマを設定し、段階的にリーダーシップ能力を育成。
 実践とフィードバックを繰り返すことで、学んだ内容を現場で活かす力を養成。

このような長期的かつ体系的な研修構成により、参加者は自らの成長を実感し、組織全体のリーダーシップレベルが向上しています。

3.対話がベースの参加型研修

E-learningの普及に伴い、対面研修のスタイルは「対話重視」の参加型へと進化しています。

以前は、講師からの一方的な知識伝達が主流でしたが、現在では参加者同士の対話やディスカッションを中心としたアプローチが主流となっています。これにより、知識の定着だけでなく、深い気づきや実践的な解決策の創出が期待できます。

参加型研修の特徴:
 ・実際の業務課題を題材に、参加者同士が意見交換を行う。
 ・グループワークやロールプレイを通じて、具体的な解決策を模索。
 ・多様な視点や経験を共有し、新たな発想やアプローチを獲得。

例えば、「チームビルディング」をテーマにした研修では:
 1. 最新の理論やトレンドを学習し、基礎知識を共有。
 2. 各自が所属するチームの課題を共有し、共通の問題点を抽出。
 3. グループで解決策を検討し、具体的なアクションプランを策定。
 4. 研修後に実践し、次回研修で成果と課題を共有することで、継続的な改善を図る。

このようなプロセスを通じて、参加者は自ら考え、行動し、成果を出す力を身につけていきます。また、主体的に学ぶ姿勢が養われ、組織全体の学習文化の醸成にもつながります。

4.職種の壁を超えた研修会で絆を作る

多職種が協働する医療現場において、職種や部署間の壁を越えた研修が重要視されています。
病院組織は、さまざまな専門性を持つ職員が集まるため、部署間や職種間でのコミュニケーション不足や連携の課題が生じがちです。これらの壁は、エネルギーや時間の無駄を生み出し、組織全体の効率を低下させる要因となります。

職種間の壁を取り除くための取り組み:
 異なる職種や部署の同じ階層の職員を集めた合同研修を実施。
 対話や共同作業を通じて、お互いの役割や課題を理解し合う。
 共通の目標やビジョンを共有し、協働意識を高める。

研修後の参加者からは、以下のようなポジティブなフィードバックが寄せられています。
「他部署の方も同じような悩みを抱えていることを知り、親近感が湧いた。」、「研修を通じて、新たな人間関係が築け、業務での連携がスムーズになった。」、「職種の垣根を越えた意見交換ができ、視野が広がった。」
このような研修会は、組織内の信頼関係を強化し、チーム全体のパフォーマンスをも向上させます。また、日常業務におけるコミュニケーションが活発化し、問題解決のスピードも向上しています。

まとめ

リーダー育成に本気で取り組む病院が増加している背景には、激動する医療環境に対応し、持続可能な組織を構築する必要性があります。

今回ご紹介した4つのポイント:
  1. 経営トップの積極的な関与
  2. 継続的かつ体系的な研修プログラム
  3. 対話を重視した参加型研修
  4. 職種間の壁を越えた協働意識の醸成

これらは、効果的なリーダー育成を実現するための重要な要素です。研修を企画・実施される際には、ぜひこれらのポイントを参考にしてみてください。

病院幹部のための組織開発講座 第17弾
事例から学ぶ病院のリーダー育成


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組織開発・人材開発の株式会社ミライバから、 江畑直樹と田中梨央がお届けする音声番組『ミライバ組織開発ラジオ』です。

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組織開発というアプローチ

本稿の執筆者

江畑直樹(えばた なおき)
株式会社ミライバ 取締役

2003年日本経営入社。主に医療機関、福祉施設の組織創りや幹部・管理職・監督職の研修に従事。2018年に株式会社ミライバを設立し、組織開発コンサルティングや人材開発研修の支援を行う。成人発達理論、学習する組織、U理論、インテグラル理論、NVC等の理論をベースとし、首都大学東京専門職大学院や日本社会事業大学専門職大学院では、これら理論を軸とした組織創りやサービス開発等について看護管理者、福祉管理者を対象に授業を行う。

株式会社ミライバ/株式会社日本経営

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

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